本記事では、世界ではすでに主流となりつつある9価HPVワクチンについての日本での現状を解説します。
※ 専門的な表現も含まれていますので、分かりづらい表現がありましたら、以下の記事についてもご参照いたければ幸いです。
日本でも9価HPVワクチンが承認
日本でもようやく、2020年7月に9価HPVワクチンが承認されました。2020年8月現在、まだ発売準備中で、価格もまだ分かりません。
9価HPVワクチンが定期予防接種の対象となるかどうかもまだ分かりませんが、発売後は、自費であれば接種可能となります。
9価の方がいいの?
子宮頸がんやその前がん病変の予防効果は9価が最も高いです。こちらの記事もご参照ください→『HPVワクチンの種類』(リンク)
特に日本人は、子宮頸がんの原因としてHPV 52, 58型が多いという特徴があり、2価・4価ワクチンでは約6割しか予防できません。
9価ワクチンであれば、日本人でも子宮頸がんの原因HPVの約9割の感染を予防できます。つまり、日本人にこそ9価ワクチンが必要、とも言えます。
9価ワクチンが定期予防接種の対象となるのを待つべき?
ぜひ9価ワクチンも定期予防接種の対象となってほしいのですが、その見込みは現状まだ全く分かりません。
もし定期予防接種で9価がうてるとなれば、それにこしたことはありません。ですので、中3までの女の子は、まだ接種対象期間に余裕がありますので、高1になるまで待っていてよいと思います。
今年高1の子は、
- 定期予防接種として無料で4価ワクチンを接種
- 9価ワクチン発売後に自費で接種
の2つの選択肢があります。
4価であっても約6割の予防効果はありますし、これまでの子たちは2価か4価を接種してきているので、無料で接種できるうちに4価ワクチンを接種するというのもよいと思います。
より高い予防効果を求めるなら9価ワクチンになりますが、少なくとも4価ワクチンの5~6万円よりは高くなるでしょうし、あとは費用対効果のとらえ方次第になると思います。
9価ワクチンが定期予防接種になるかどうかまだ分からないので、中3までの子はまだしばらく様子みましょう。
高1の子は定期予防接種の対象のうちに4価を接種しておいてもよいと思います。
参考文献
- Stanley M, Lowy D, Frazer I: Prophylactic HPV vaccines: underlying mechanisms. Vaccine 24:S106-S113, 2006
- Huh WK, et al: Final efficacy, immunogenicity, and safety analyses of a nine-valent human papillomavirus vaccine in women aged 16-26 years: a randomized,double-blind trial. Lancet 390: 2143-2159, 2017.
執筆者 医師:稲葉 可奈子