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妊娠中に子宮頸がんが見つかった場合の治療や赤ちゃんへの影響は?

CATEGORY:HPV感染症や子宮頸がんについて知りたい方

投稿日時2020.09.24

更新日時2021.12.12

執筆者 医師:重見大介

みんちゃん

子宮頸がんは若い女性もかかる病気だよね。もし妊娠中に子宮頸がんが見つかったらどうなるのかな?


パピちゃん

がんの進行度や妊娠の時期によって方針が変わるから一概には言えないんだ。詳しく説明していくね。

子宮頸がんは20-30代の女性にも発症することがあるため、妊娠中に子宮頸がんが見つかることもありえます。

そのような場合、どのような治療が行われるのか、妊娠している赤ちゃんへの影響はどうか、詳しく説明します。

※ 専門用語について正しく知りたい人は、以下の記事も読んでみてください。

 

妊娠初期には原則として必ず子宮頸がん検査を実施します

妊娠すると、その時点での異常がないかをチェックするため、「初期検査」として血液型、血糖値、各種感染症検査(B型肝炎など)と合わせ、子宮頸がん検査(細胞診)も実施します1)
» 子宮頸がん検診の実際の流れ

ここで異常がなければ、妊娠中に再検査をすることは基本的にありません。

ただし、初期に異常が見つかった場合には、妊娠していないときと同じように、続けて精密検査(ハイリスクHPV検査、コルポスコープなど)を実施することになります。

精密検査の詳細については「国立がん研究センター」のウェブサイトをご覧ください。

子宮頸がん検査で子宮頸部異形成と診断された場合は、定期検査を行いながら経過をみます

妊娠初期の検査で、子宮頸がんの前段階である「子宮頸部異形成」が見つかることがあります。

異形成には軽度、中等度、高度の三段階がありますが、妊娠中はこのいずれの段階でも、すぐに子宮の入り口部分を切り取る手術(子宮頸部円錐切除術)を行うことは通常ありません。

ただし、悪化していないかチェックするために、妊娠中に検査(細胞診やコルポスコープ)を数回行います。

妊娠前にすでに異形成と診断されていた場合も同じです。

なお、異形成があることだけで、分娩方法が帝王切開となることはありません

また、異形成が子宮頸がんに進行した場合には、以下と同じ流れで治療方針が検討されます。

 

妊娠中に子宮頸がんが見つかった場合は、その進行度やがん細胞のタイプによって治療方針が異なります

妊婦10万人あたり約10~50人が、妊娠中に子宮頸がんと診断されます。これは妊娠中に診断されるがんの中で2番目に多いのです2)


妊娠中に子宮頸部異形成と診断されたり、子宮頸癌が見つかった場合の経過について

妊娠中に子宮頸がんが見つかった場合には、「妊娠を継続するか、子宮頸がんの治療を優先するか」の判断が必要になります。

治療を優先する、ということは、「治療を早期に開始しないと命に危険が及ぶ可能性がある」という意味で、妊娠中の数ヶ月でさえも放っておけない状況と考えてください。

つまり、辛いですが妊娠継続を諦めなければならない可能性があります。

治療方針の判断に最も影響する情報は、「進行度」と「がん細胞のタイプ」です。

  • 進行度:ごく初期(IA1期など)であれば妊娠を継続することができることもありますが、それ以上の場合には治療を優先とすることが原則
  • がん細胞のタイプ:腺がんという危険性の高いタイプでは、ごく初期(IA1期など)でも治療の優先が原則

以上のような情報を総合的に考え、治療方針が検討されます。

もちろん、ご自身のお気持ちや希望も治療方針を決める上で大切なものになりますが、医師は上記のようなことを踏まえて治療方針をお示しします。

子宮頸がんの治療内容は、妊娠していないときと同じです

それでは、妊娠中に子宮頸がんが見つかり、治療することが決まった場合には、どのような治療内容となるのでしょうか。

まず、全身検査(CTやMRI)でさらに詳しくがんの進行状況を把握します。

その上で、手術(子宮摘出など)、放射線治療、化学療法(抗がん剤など)などが実施されます3)

これらは、「標準治療」として科学的根拠を持った最善と考えられる治療であり、妊娠していない女性に対する治療と基本的には同じものとなります。

もし治療を開始する時点で妊娠22週を超えていれば、帝王切開によって赤ちゃんを子宮から出した上で、子宮頸がんへの治療が開始されることもあります。

以上のような情報を総合的に考え、治療方針が検討されます。

もちろん、ご自身のお気持ちや希望も治療方針を決める上で大切なものになりますが、医師は上記のようなことを踏まえて治療方針をお示しします。

まとめ

妊娠中に子宮頸がんが見つかった場合、がんの進行状況を把握した上で治療方針が検討されます。

治療内容は妊娠していない場合と基本的に同じですが、状況によっては妊娠を諦めなければならない可能性もあります。

こういったことを避けるためにも、妊娠前に子宮頸がん予防としてのHPVワクチンと定期的な検診を受けることが大切です。

みんちゃん

妊娠したら必ず子宮頸がんの検査をするんだね。お腹に赤ちゃんがいるのに、子宮頸がんの治療もすることになったら大変だなぁ…。


パピちゃん

そうだね!だから、子宮頸がんを予防するためにHPVワクチンを打っておくことは、とっても大事なんだね!




執筆者 医師:重見 大介重見 大介

引用文献

  1. 厚生労働省. 妊婦健診Q&A.
  2. Amant F, et al. Gynaecologic cancer complicating pregnancy: an overview. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol. 2010;24(1):61-79.
  3. 国立がん研究センター. 子宮頸がん 治療.

※ 2021/12/12 内容を更新しました。

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