世界三大医学誌の1つであるランセット誌から、日本は世界の中でワクチンに対する信頼性が最も低い国であるという研究結果が発表されました(2020年9月10日)。
この研究をもとに、他の国々との違いや、ワクチンの信頼性を上げるためにはどうすればよいかについて解説していきます。
※ 専門的な表現も含まれていますので、分かりづらい表現がありましたら、以下の記事についてもご参照いたければ幸いです。
ワクチンの信頼性が下がっていることは世界中で大きな問題になっています
ワクチンの有効性や安全性に対する信頼が下がってしまう事例は世界中で報告されています。
ワクチンの接種率が低下すると、麻疹(はしか)などの予防できるはずの病気が再流行してしまうことになります。
このため、2019年には世界保健機関(WHO)はワクチンの信頼性が下がってしまうことを「世界の健康に対する10の脅威」の1つにあげています1)。
今回、「ランセット」という医学誌に、世界の国々におけるワクチンに対する信頼性を調べた研究が発表されました2)。
日本はワクチンの安全性や有効性に対する信頼が最も低い国になっています
今回の調査は、2015年9月から2019年12月にかけて世界149カ国で約28万人に対して行われました。
その結果、日本はフランス・モンゴルと並んでワクチンが安全であると信じている人の割合が最も低く(8.9%)、モンゴル・モロッコと並んでワクチンが有効であると信じている人の割合が最も低い(14.7%)ことがわかりました。
アルゼンチンなど、90%近くの人がワクチンの有効性・安全性を信頼している国と比較すると、とても大きな差がみられます。
論文の中では、2013年に厚生労働省がHPVワクチンの積極的接種の勧奨を差し控えたことが、ワクチンに対する信頼性が下がった原因になっていると分析しています。
このことは、麻疹(はしか)など他の病気の流行を引き起こしていると指摘されています。
どうすればワクチンに対する信頼性を高めることができるのでしょうか
今回の研究では、医師や看護師などの医療従事者からの情報を信頼している人や、自ら積極的に情報を入手する人の方が、ワクチンに対する理解が深まり、結果的に接種行動にもつながりやすいことがわかりました。
これはHPVワクチンでも起きている問題です。積極的に調べない限り情報が入ってこないため、「知らないうちにワクチン接種のベストな時期を逃す」ことになってしまっているのです。まずは、医療従事者が信頼される情報提供を行うことが大切です。
その上で、接種をするかしないか、自ら考えていただきたいのです。
ワクチンを怖いと思うことや、有効性や安全性をよく知らないことは決して悪いことではありません。
「みんパピ!」は科学的に正確な情報提供をすることで、「みんながHPVワクチンについて知る機会を増やす」ことが大切だと考えています。
まとめ
日本がワクチンに対する信頼性を取り戻すためには、医療従事者がワクチンのことをわかりやすく説明していくことが大切です。
執筆者 医師:木下喬弘
参考文献
1)WHO. Ten threats to global health in 2019.
2)Lancet.Epub ahead of print