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HPVワクチンの安全性は数多くの研究で確かめられています

CATEGORY:HPVワクチンについて知りたい方

投稿日時2020.08.28

更新日時2021.12.07

執筆者 医師:木下 喬弘

みんちゃん

HPVワクチンって危ないって聞いたことがあるんだけど、これって本当なの?


パピちゃん

最近になって世界中でたくさんの研究が行われて、安全だってことが確かめられてるんだよ!安全性や副反応についてわかってきたことを説明するね。

HPVワクチンは「危険なワクチン」だというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、数多くの研究によって「HPVワクチンの接種が特別に重い副反応を引き起こすわけではない」ということが確かめられています。

HPVワクチンの安全性について、科学的な根拠に基づく情報をお伝えします。

専門用語について正しく知りたい人は、以下の記事も読んでみてください。

HPVワクチンは安全性が高く副反応を起こしにくいワクチンです

日本では、過去に一時期ニュースでさかんに「HPVワクチン接種後の重い症状(全身の筋肉や神経への影響)」が報道されました。そうした報道の影響もあって、HPVワクチンは特別に重い副反応を起こしやすいという印象をお持ちの方もいるかもしれません。

しかし、その後の世界中の数多くの研究で、HPVワクチンは「安全性が高いワクチンである」ということがわかっています1,2,3,4。日本でも、名古屋市で大規模な調査が行われた結果、「HPVワクチンの接種によって体調不良が増えているという証拠はない」ことが確かめられました5

HPVワクチンは世界中のほとんどの国で接種が推奨されています

こうした研究成果を元に、世界保健機関(WHO)や欧米の政府機関であるアメリカ疾病予防管理センター(CDC)、英国国民保険サービス(NHS)などでは、HPVワクチンは安全なワクチンであることを公的文書に明記しています6,7,8。既に世界で合計約8億回接種されていますが、日本での副反応報道のあとに接種を中断したという国はありません9

日本でも、日本産科婦人科学会やHPVワクチンに関連する17の学会が、HPVワクチンと接種後の様々な症状の間に因果関係は認められないことを理由に、HPVワクチンの接種を勧めています10,11

HPVワクチンの副反応ではどのような症状が起こるのか

HPVワクチンを接種した後に見られる副反応のほとんどは軽い痛みや腫れ、頭痛などの一時的な症状です12

日本で主に接種されている4価HPVワクチンでは、50%以上の人に起こるのは打った場所の痛みだけです。

10~50%の人に打った場所の腫れや赤み、1~10%の人にかゆみや出血、不快感、頭痛、発熱などが認められることがわかっています。新型コロナワクチンを接種した後のように、だるさが数日続いたりすることは非常に稀です。

HPVワクチン接種後に重い症状が起こった人の割合

HPVワクチンを接種した後に、失神や全身の痛み、歩行障害などの重い症状が起きた割合は、1万人あたり5人程度とされています。しかし、その中の約9割の人が回復したことが確認されています13

HPVワクチンを接種した後の失神は、「血管迷走神経反射」や「予防接種ストレス関連反応」などと呼ばれる病態で、ワクチンの成分によって引き起こされるものではありません。しかし、急に転倒して頭を打つなどの危険があるため、注意が必要です。過去に注射で気分が悪くなったり失神を起こしたことがある人や、接種が不安な人は、寝転んだ状態で接種することもできますので、医療機関でお申し出ください。

全身の痛みや歩行障害などの症状は、必ずしもワクチンが原因ではないことに注意が必要です。こうした症状のほとんどは、Complex Regional Pain Syndrome(10-40代の女性に多い手足の強い痛みを特徴とする疾患)や多発性硬化症(視力の低下や手足のふるえなどが起こる疾患)といった別の病気が原因であった可能性が考えられています14,15。一方で、女性が一生のうちに子宮頸がんになる割合は1万人あたり132人とされていて、約9割は子宮摘出など侵襲の大きな治療が必要になり、そのうち30人がなくなるとされています12,16。子宮頸がんになる頻度は、ワクチン接種の後に起きた重い症状の頻度の25倍以上にのぼります。

 

まとめ

HPVワクチンは科学的に安全性が確かめられたワクチンです。主な副反応は接種した場所の痛みや腫れなどで、全身の痛みや歩行障害はワクチンが原因で起きたわけではないと考えられています。

みんちゃん

HPVワクチンって実は色んな研究で安全性が確認されてるんだねー!全然知らなかったよ。


パピちゃん

子宮頸がんの予防のためには大事なワクチンだってことも、ちゃんとわかっておく必要があるわね。

執筆者 医師:木下喬弘

木下喬弘

 

参考文献

1)Cochrane Database Syst Rev. 2018;9;5:CD009069.
2)JAMA. 2009;302:750-7.
3)Pediatrics. 2019;144:e20191791.
4)Pediatrics. 2019;144:e20191808.
5)Papillomavirus Res. 2018;5:96-103.
6)World Health Organization. HPV Vaccines and Safety
7)Centers for Disease Control and Prevention. Safety Information for HPV Vaccine
8)National Health Service. HPV vaccine safety
9)日本産科婦人科学会雑誌.2019;71:652-659.
10)日本産科婦人科学会.子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
11)予防接種推進専門協議会.ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種推進に向けた関連学術団体の見解
12)第 48 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会.HPVワクチンの情報提供について(案)
13)第15回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会.副反応追跡調査結果について
14)EBioMedicine. 2015;2:1014-5.
15)JAMA. 2015;313:54–61.
16)日本産科婦人科学会雑誌.2020;72:676-683.

※ 2020/9/11 因果関係の明らかでない有害事象に関する記載を「症状」ないし「重い症状」に変更しました。
※ 2021/12/7 内容を更新しました。

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