ねえねえパピちゃん。HPVワクチンの副反応ってどんなものがあるの?
副反応を一覧で確認してみよう。ただ、HPVワクチンによって重篤な副反応は増えないと考えられてるよ。
ワクチンは病原体への感染予防にとても有効ですが、副反応は誰もが気になるもの。
特にHPVワクチンでは、副反応についての不安を抱える人が今でも多くいらっしゃいます。
この記事では、これまでに報告されている副反応を一覧にして整理します。
ただし、副反応と有害事象の違いもしっかりと理解しておきましょうね。
※ 専門的な表現も含まれていますので、分かりづらい表現がありましたら、以下の記事についてもご参照いたければ幸いです。
日本からの報告
まず、日本国内での調査報告を紹介します。
本記事では、以下の2つによる副反応に関する結果を解説します。
1. 名古屋スタディ
2. 厚生労働省副反応追跡調査
(1) 名古屋スタディ
日本では、2015年に、名古屋市に住民票のある小学校6年生から高校3年生までの女子約7万人に対してアンケート調査を行いました(名古屋スタディ)。
回答のあった約3万人のデータを解析した結果、24項目にわたる症状は、ワクチンを接種した人と接種していない人で差はみられなかったという結論が得られました1)。
副反応一覧(名古屋スタディ)
上記の研究によって評価された24項目は次の通りです1)。
接種部位の局所症状ではなく、全身性の症状を評価していることがわかります。
これら全ての症状が、接種した人と接種してない人で頻度に差はありませんでした。
- 月経不順
- 異常な量の月経時出血
- 関節などの痛み
- 重度の頭痛
- 疲労感
- 持久力の低下
- 集中力の低下
- 視野の異常
- 光に対する過敏性
- 突然の視力低下
- めまい
- 足の冷感
- 眠りにつきにくい
- 睡眠時間の異常な長さ
- 肌荒れ
- 過呼吸
- 記憶力の低下
- 簡単な計算ができなくなる
- 基本的な漢字を覚えられない
- 制御不能な不随意運動
- 普通に歩くことができない
- 杖や車いすが必要になる
- 突然の筋力の低下
- 手足の脱力感
(2) 厚生労働省副反応追跡調査
厚生労働省は、「副反応追跡調査結果について」というページに、HPVワクチンの副反応追跡調査の結果概要を公表しています2)。
これは、平成26年11月までに副反応の疑いがあると病院から報告があった2,584名人(被接種者約338万人の0.08%【のべ接種回数約890万人の0.03 %】 )の症状や経過をまとめたものです。
2,584名人のうち発症日や転帰が把握できたのは1,739人で、うち75%では7日以内に症状が回復していました。
また、症状が未回復の人は186人(被接種者約338万人の0.006%【のべ接種回数約890万人の0.002 %】 )と報告されています。
副反応一覧(厚生労働省副反応追跡調査)
未回復の人の症状として記載されているものは、
- 頭痛
- 倦怠感
- 関節痛
- 筋肉痛 ・認知機能の低下
- めまい
- 月経不順 ・感覚鈍磨
などです。
ただし、本調査では非接種者と比べてこれらの症状が多いかどうかはわかりませんので厳密には副反応とは呼べず、解釈には注意が必要です。
日本からもこういった調査や研究の報告があるんだね。接種と重い症状に関連性はないだろうって結論なのかぁ。
海外からの報告
海外では日本よりはるかに多くのHPVワクチンが接種されているため、多数の研究・調査報告が存在します。
ここでは、最もエビデンスレベルの高い(=科学的な根拠の信頼性が高い)研究である「メタアナリシス」を紹介します。
メタアナリシスは、過去の複数の研究結果を統合し、統計学的な検討を加え評価する研究手法です。
HPVワクチンの副反応報告 〜メタアナリシス〜
2018年に、HPVワクチンの有効性と安全性に関するメタアナリシスが報告されました3)。
これは、過去に報告された26個の研究結果をまとめて評価したものになります。
その結果、ワクチン接種と局所症状または軽度の全身症状には関連性が認められました。
一方で、重篤な症状や死亡、妊娠への悪影響の増加とは関連性が認められませんでした。
評価されたHPVワクチンの副反応一覧
副反応の疑いとして本研究で評価された症状の一覧は次の通りです3)。
- 局所症状(注射部位の発赤、腫れ、痛み、かゆみ)
- 軽度の全身症状
- 重篤な全身症状
- 死亡
- 妊娠予後(特に児の先天性異常)
※ 上記のうち、3, 4, 5についてはHPVワクチン接種によって増加していなかったのです。
こうしてきちんとしたエビデンスがあるから、世界各国でHPVワクチンは定期接種に定められているんだね。
まとめ
HPVワクチンの副反応を一覧で紹介しました。
まとめると、「HPVワクチンは、局所的または軽度の全身性の症状とは関連があるが、重篤な症状や死亡、妊娠への悪影響とは関連していない」と考えて良いでしょう。
執筆者 医師:重見 大介