「HPVワクチンの前に、そもそもHPV(ヒトパピローマウイルス)って何なの?」という疑問を、分かりやすく解説します。
ぜひまずこちらをお読み頂き、HPVが実は身の回りにありふれたウイルスであることを、みんなで学びましょう。


HPVは『私たちの身の回りにありふれたウイルス』
HPVは、ヒトにのみ感染することができるDNAウイルスで、ウイルスに感染した皮膚や粘膜との接触により感染します。皮膚や粘膜の深いところにある細胞にHPVが感染すると、ウイルスの遺伝子が細胞内に入り込み、HPVが勝手に増殖します。
HPVは細かいキズから皮膚や粘膜の深いところに入り込むため、例えば温泉やプールで水中に漂うウイルスにふれただけでは感染しません。HPVは、主に性交渉などの刺激によって生じる細かな粘膜のキズから感染します。
なんと、一般女性のおよそ8割は、HPVに一度でも感染したことがあると推定されています1)。性交経験のある女性はほぼみなさん感染したことがあると言えますし、それは男性も同様なのです。
HPVは『私たちの身の回りにありふれたウイルス』で、普段の生活の中でだれでも感染する可能性があるウイルスと言えるでしょう2)。

子宮頸がんを含む様々な病気の原因になります
HPVには200種類以上の遺伝子型(タイプ)があり、子宮頸がんなどの『がん』の原因となるものを「ハイリスクHPV」、尖圭コンジローマなどの良性のイボの原因となる(=「がん」の原因にはならない)ものを「ローリスクHPV」と呼びます [*参照]。
HPVについて聞いたことがある方の中には、『子宮頸がんの原因』という印象をお持ちの方もいると思います。
ですが、意外なことに、ハイリスクHPVは子宮頸がんのほかにも、中咽頭がん、陰茎がん、肛門がん、膣がん、外陰がんなど、男性もかかるがんの原因でもあるのです。
また、尖圭コンジローマも、男女共通の病気です。
*具体的なHPV型の分類は以下の通りです3)。
- ハイリスクHPV:HPV16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 66, 68 型
- ローリスクHPV:HPV6, 11, 42, 43, 44 型
HPVの感染はワクチンで予防できます
でも、安心してください。HPVは突然変異で変化したりしないため、ワクチンを打つことでHPVの感染を予防することができるのです。
HPVワクチンについては、以下のHPVワクチンのカテゴリーの記事をご参照ください。
まとめ
HPVは普段の生活においてありふれたウイルスで、子宮頸がんのほか、男性にも関係のある病気の原因となります。
HPVの感染は、ワクチンを打つことで予防できます。


執筆者 医師:稲葉 可奈子

引用文献
- J Natl Cancer Inst Monogr. 2003; 31: 3-13.
- N Engl J Med. 1998; 338: 423.
- Nat Rev Cancer. 2002; 2: 342-350.