ねえねえパピちゃん、よく聞く「副作用」と「副反応」って何が違うの?「有害事象」って言葉もあるよね?
ワクチンを打った後に体に起きたよくないこと全てを有害事象と言うんだ。副反応とは、その中でワクチンが原因で起こったもの。副作用は他の医薬品で使う言葉だね。
ワクチンを接種した後に起こったあらゆる健康上の問題を、幅広く「有害事象」といいます。
一方、ワクチン接種が原因で起こった健康上の問題が「副反応」です。「副作用」は、通常ワクチン以外の医薬品に対して使われる言葉です。
有害事象、副反応、副作用はどう違うのか
多くの人にとって、「副作用」という言葉に比べて、「有害事象」や「副反応」という言葉は聞き慣れないものかも知れません。
この記事では、この3つの用語の定義について詳しく解説していきます。 これらの言葉の意味を正確に知っておくことは、ワクチンの安全性を理解する上でも大変重要です。
有害事象とは
ワクチンを含むあらゆる医薬品を使用した後に起きた、あらゆる健康上の問題のことを「有害事象」といいます。
「有害事象」には、医薬品との因果関係があるものも、因果関係がないものも含まれます。
例えば、解熱鎮痛剤を飲んだ後に胃の調子が悪くなってしまうのも「有害事象」です。
一方で、ワクチンを接種した後に雷に打たれてしまっても「有害事象」と呼んでよいのです。
成分の作用機序を考えると、前者は解熱鎮痛剤との因果関係があると考えられます。
一方、常識的に考えても後者はワクチンとの因果関係はなく、偶然のできごとと考えられます。
このように、「有害事象」とは医薬品が原因であるかどうかを問わない、というところがポイントです。
副反応とは
一方で、ワクチンを接種したことが原因で起きた健康上の問題のことを「副反応」といいます。
つまり、有害事象の中で、ワクチンとの因果関係が証明されたものを「副反応」と呼ぶのです。
有害事象と副反応は、下の図のような関係性になっています。
ワクチンが体に与える悪い影響は、最初から全てがわかっているわけではありません。
ワクチンの開発段階でも、市場に出回った後においても、予想もしない悪影響が出ることがないかどうかを調べることはとても大切です。
このため、ワクチンを使用した後に起きたあらゆる健康上の問題(=有害事象)を広く調査し、ワクチンが原因で起きているかどうか(=副反応かどうか)が常に評価されているのです。
副作用とは
「副作用」という言葉は、ワクチン以外の医薬品に対して使われます。病気の治療に使われる薬には、目的としていた作用(治療効果)以外に別の作用が起こることがあります。
本来目的としていた「主たる作用」とは異なる作用という意味で、これを「副作用」といいます。副作用は殆どの場合、体にとって望ましくない(悪い)影響をきたします。
「副反応」とは、ワクチンに対して使われる言葉で、「副作用」とは、ワクチン以外の医薬品に対して使われる言葉である、と考えるとよいと思います。
ただし、米国のCDC(疾病予防管理センター)などは、ワクチンに対してもside effect(=副作用)という言葉を使うことも多く、「副反応」と「副作用」は厳密に使い分けられていない場合もあります1)。
HPVワクチンを接種した後の体調不良は有害事象か副反応か
HPVワクチンを接種した後に起こる様々な症状について、心配になる人も多いと思います。
HPVワクチンの安全性を理解するためには、「有害事象」と「副反応」という言葉を正しく知っておくことがとても大切です。
HPVワクチン接種後の様々な重い症状(有害事象)が、副反応であるという証拠はありません
日本では、HPVワクチンを接種した後に手足がしびれたり、痛みが出たり、記憶力が落ちてしまうなど、様々な体調不良を経験した女性の報道が2013年になされた結果、危険なワクチンであるという認識が広がってしまいました。
しかし、その後国内外の様々な研究により、ワクチンを接種した人も接種していない人も、同じぐらいの頻度でそのような体調不良を経験しているということがわかりました2-5)。
つまり、HPVワクチンを接種した後に多数報告されている「有害事象」は、数百万人のデータをみても「副反応」であるという証拠はないのです。
このように、ワクチンの安全性を評価する時は、ワクチン接種との因果関係がどの程度調査されているのか、適切に表現する必要があります。
そのためには、情報を伝える側が「有害事象」と「副反応」という言葉を正しく使い分け、受け取る側も用語の違いを知っておくことが大切です。
ワクチンを打った後に「有害事象」が起こったら、「副反応」かどうか調べることが大切なんだね!
まとめ
ワクチンを接種した後に起こるあらゆる好ましくない健康上の問題のことを「有害事象」といい、その中でワクチンが原因で起きたものを「副反応」といいます。
「副作用」とは、通常ワクチン以外の医薬品に対して使われる言葉です。
ワクチンの安全性を評価するためには、幅広く有害事象を報告し、因果関係のある副反応かどうかを調べることが大切です。
執筆者 医師:木下喬弘