子宮頸がん検診をきちんと受けていれば、子宮頸がんの予防は十分なんだよね?
いいえ。定期検診とHPVワクチンを組み合わせることが予防にはとても大切で、検診だけでは不十分なんだよ。
子宮頸がん検診を受けていれば子宮頸がんの予防は十分、とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、定期的な検診と、HPVワクチンによる予防を組み合わせることがとても大切であり、検診だけでは不十分なのです。その理由を詳しく説明いたします。
※ 専門用語について正しく知りたい人は、以下の記事も読んでみてください。
子宮頸がん検診は「異常が起きたあとの早期発見」が目的です
子宮頸がん検診は、子宮の入口(=頸部)の細胞を採取して、異常(子宮頸がんの前段階=子宮頸部異形成*)の有無を調べる検査(細胞診 [さいぼうしん])です。
負担が小さく、短時間で済む簡便な検査であるため、世界中で行われています。
定期的な検診(細胞診)は子宮頸がんの「早期発見」に有効ですが、「すでに細胞の異常が起きたあと」の発見しかできません。
一方、HPVワクチンは、その細胞の異常がそもそもおきないように、事前に防ぐことができるのです。
*子宮頸部異形成については以下の記事 もご参照ください。
子宮頸部の異常が軽度でも心身への負担は小さくありません
子宮頸部の異常が、異形成と呼ばれるがんの手前の段階で発見された場合には、その程度によって対応が異なります。
軽度の異形成であれば、自然に治る可能性もあるため、すぐに治療はせずに済むことが多いですが、数ヶ月ごとの定期的な検査が必要になり、通院や内診の負担が大きくなってしまいます。
また、「いつ悪化してしまうのか」「いつまで検査を続けなくてはならないのか」といった不安と常に隣り合わせとなり、精神的な負担も小さくないでしょう。
子宮頸部の異常が高度であれば手術が検討されます
もし中等度〜高度の異形成であれば、「子宮頸部円錐切除術 [えんすいせつじょじゅつ]」という手術により子宮頸部の一部を切り取ることで、異常の広がりを確認します*。
もしその切除で異常な部分を全て取り切ることができれば、治療を兼ねることも可能です。
早期発見を通じ、子宮頸がんになる手前で治療できたことは大変素晴らしいことといえますが、その影響は決して小さくありません。例えば、将来の妊娠にも大きな影響を与えてしまうのです。
*手術のタイミングや内容は、個々の状況を踏まえて主治医が判断します。
子宮頸部円錐切除術により子宮頸がんになる手前での治療が可能だがリスクもある
上記の子宮頸部円錐切除術による身体への影響として、
- 手術時に合併症(多量出血や腟内損傷など)が起こる可能性がある
- その後の妊娠での流産、早産のリスクが上がる
- 子宮口が細くなることで、月経のトラブルが生じる可能性がある
などが挙げられます1)。
このように、がんになる手前で細胞の異常(前がん病変)が早期発見できても、心身の負担は決して小さくなく、また手術に伴うリスクもあるのです。
このため、「HPVワクチンによってHPVの感染そのものを防ぎ、前がん病変自体を回避することが非常に大切」といえるのです。
まとめ
定期検診を受けることはとても重要ですが、細胞の異常が起きたあとでしか発見できず、頻回な検査や手術、精神的負担などに悩まされる女性も少なくありません。
このため、HPVの感染自体を防ぐことのできるHPVワクチンと定期検診を組み合わせることが一番効果的だと考えられています。
執筆者 医師:重見 大介
引用文献
※ 2021/12/12 内容を更新しました。