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HPVワクチンに関するメディア報道上の課題【医療者個々人のウェブ情報発信の重要性】

CATEGORY:HPVワクチンについて知りたい方

投稿日時2021.01.30

更新日時2021.06.07

執筆者 医師:重見大介

みんちゃん

日本では2013年以降、HPVワクチンについて副反応を心配する報道が増えたって聞いたけど、本当なのかな?


パピちゃん

確かにネガティブなものが目立っていた気がするね。メディアと医療情報に関する論文を調べてみようか。

 

医療や健康に関する情報の拡散に、メディアは大きな影響力を持ちます。

HPVワクチンに関する日本の報道について、いくつかの研究を元に振り返ってみましょう。

 

※ 専門的な表現も含まれていますので、分かりづらい表現がありましたら、以下の記事についてもご参照いたければ幸いです。

 

日本政府によるHPVワクチン積極的勧奨の差し控えが、メディアの報道に大きな影響を与えた

2013年3月、日本ではヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの副反応の可能性を報じた新聞記事が掲載され、各メディアがそれを取り上げたことで社会に拡散されました。

2013年6月、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会は、HPVワクチンの安全性の審議を行い、「必要な情報を提示できるまで積極的なワクチン接種の勧奨を中止する」ことを決めました。
» 厚生労働省HPより【引用】

2011年から2015年に出版された日本の新聞記事を調査した報告によると、2013年を境に、副反応に関連したキーワードを含む記事が増え、有効性に関連するキーワードを含む記事は有意に減少しました1

これにより、非医療従事者には「(不確かな)副反応が強調された報道」が強く印象づけられたと報告されています1

 

みんちゃん

なるほど、副反応を心配する記事が増えてしまったという意見もあるんだね。これは日本だけの出来事だったのかな?

 

日本の副反応に関する報道は世界各国にも影響を与えた

日本におけるHPVワクチンの積極的勧奨中止のニュースは、オンラインメディアやSNSを通じて、世界的に広まったことがわかっています

一方で、世界保健機関(WHO)などの専門家組織は、この決定に対して批判的な対応を取りました2

このような日本の状況が、その後にHPVワクチンの安全性が再確認されて以降も変わっていないことは国際的にも注目され、最近でも「早期のHPVワクチン接種推奨の再開」をするべきだという見解が出されています。

2020年にHPVワクチン接種率が回復すれば、推定される将来の子宮頸がん患者の60%(15,000〜16,000人程度)と死亡者の60%(3,000~3,400人程度)を防ぐことができるとの報告もあります3

 

公衆衛生上の課題について情報発信する際の4つのポイント

このように、ワクチンをめぐるメディアの報道には課題もあり、かつ、近年では、オンラインメディアやSNSを用いて急速に(必ずしも正確性が担保されないものも含めて)情報が拡散される傾向にあります。

こうした状況下では、専門家個々人による正確かつ適切な情報発信がますます求められます。

この点、公衆衛生に関する組織が科学的根拠に基づく正確な情報を社会に発信する際の重要なポイントとして、以下の4つが挙げられています4

医療者や研究者が情報発信する際には、これらのポイントを押さえた発信をされると良いでしょう。

 

不正確な情報を修正する

SNSでは情報の正誤が見分けにくいため、不正確な情報も拡散されるという問題があります。

これに対抗するために、「どこ」が「なぜ」間違っているかを指摘し、素早く正確な情報で置き換える取り組みが有用ではないかと考えられています。

 

SNSのデータを収集し情報発信に活用する

SNSは情報を発信するだけではなく、市民が公衆衛生上の施策に対してどのような反応をしたかを受信できるツールでもあります。

SNS上への投稿を解析することで、人の行動(どこに人が集まっているか、どんな情報が拡散しているかなど)や施策に対する意見を把握し、より受け入れられやすい情報発信が可能になると考えられています。

 

信頼できる発信者との連携

人は知人や自身が信頼する人からの情報を信じやすいことがわかっています。各々のコミュニティのインフルエンサーと連携することで、情報が受け取られやすいと考えられます。

これに加えて、伝えたい情報に具体的なストーリーを交えることが効果的だとされています。

 

公平性の担保

情報格差は健康格差につながることが知られており、正確な情報を手に入れにくい状況にある人は、健康アウトカムが悪くなってしまう可能性があります。

例えば、インターネット回線やWifi環境がないため、ウェブ上の情報やオンライン授業へアクセスができない人がいることには注意を払う必要があります。

 

まとめ

不正確な情報や不安を増長させるニュースは、SNSを含むメディアによって急速に拡大しやすくなっています。

医療者や研究者等の専門家は、SNSや医療系アプリなどのデジタルツールを能動的に活用し、適切な情報発信を心がけていく必要があると言えるでしょう。

 

みんちゃん

SNSなどデジタルツールの普及や発展を積極的に活用して、専門家自身が適切な情報発信をすることが大事なんだね。


パピちゃん

その通りだね。多くの専門家が正確な情報を伝えていくことが大切だね。



執筆者 医師:重見 大介

重見 大介

 

引用文献

  1. Clin Infect Dis. 2016;63(12):1634-1638.
  2. Hum Vaccin Immunother. 2014;10(9):2543-50.
  3. Lancet Public Health. 2020:e184-e185.
  4. JAMA. 2021 Jan 4

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