ねえねえパピちゃん。HPVワクチンって他の国ではどれぐらい打ってるの?
実はほとんどの国が7割以上は打ってるんだよね。日本は極端に少なくなってしまってるんだよ。
日本では接種率が非常に低くなってしまったHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン。日本以外の国ではどれぐらい打たれているのでしょうか?
世界の国々におけるHPVワクチン接種の現状について解説します。
※ 専門用語について正しく知りたい人は、以下の記事も読んでみてください。
世界の多くの国では接種対象者の7-8割の接種が当たり前
WHO(世界保健機構)によると、子宮頸がんの原因であるHPVの感染を予防するワクチンは、世界の多くの国で9-14歳の女性に優先的に接種されています1)。通常、国から接種費用の補助が出ます。
世界の先進国における接種率は上の図の通りです2)。北欧やオーストラリアは特に接種率が高く、約9割の女性が最低1回はHPVワクチンを接種しています。韓国でも接種対象の女性のうち約7割の人が接種しており、接種率が低いことを批判されていたアメリカも、2019年には6割にまで上がってきました。
世界の国々が高い接種率を実現する中で、日本では接種率が1%以下という危機的な状況でした。近年多くの医療従事者の情報提供で接種率が上昇しているという報告もありますが、2021年8月にみんパピ!が行ったアンケート調査でも、接種率は14.4%にとどまっています。
HPVワクチンの接種率が高い国で期待できる「集団免疫」
集団免疫とは
新型コロナウイルスで「集団免疫」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
これは、国や地域などの大きな集団の中で、感染症に対する免疫を持っている人が増えると、その感染症が自然に抑え込まれていく効果のことをいいます。
HPVも感染症の1つなので、社会の中で感染している人の数が減ると、病気が広まる可能性が減ります。
HPVワクチンで期待される集団免疫効果
スコットランドからの報告では、HPVワクチンの接種率が上昇したことにより、ワクチンを接種していない女性の軽度異形成が63%、中等度異形成が67%、そして高度異形成が100%予防できたとされています3)。
また、女性だけでなく男性にも高い接種率を実現しているオーストラリアでは、集団免疫により2028年には子宮頸がんは撲滅されるとの予測結果も出ています4)。
このように、多くの人がHPVワクチンを打つことが、みんなを病気から守るために大切なのです。
HPVワクチンの正確な情報がきちんと広まると接種率は高まります
副反応に対する懸念によって接種率が低下した国は日本だけではありません。
2009年にはイギリスでワクチンを接種した少女が死亡したことから不安が広がりました。
しかし、調査の結果、心臓と肺の珍しい癌があったことがわかり、ワクチンが原因であることは否定されました。
デンマークやアイルランドでもテレビ番組でワクチンの副反応への懸念が報道され、接種率が80%から50%にまで低下しました5,6)。
しかし、医療従事者や学会、市民団体が積極的なHPVワクチンの啓発活動を行い、今では接種率が回復しています。
今後は、日本でも様々な団体が力を合わせて正確な情報を発信していくことで、HPVワクチンの接種率が回復することが期待されます。
まとめ
世界の国々に比べて、日本のHPVワクチンの接種率は非常に低いのが現状です。日本でも正確な情報が広まることで、HPVワクチン接種率が他の国々に追いついていくことが期待されます。
HPVワクチンを打ってる人が日本だけこんなに少ないって全然知らなかったぁ。
そうなんだよね。ちょっとずつこのワクチンのことが広まって、打つかどうか自分で決められる人が増えたらいいね。
執筆者:医師 木下喬弘
引用文献
- World Health Organization. Human papillomavirus (HPV)
- World Health Organization. Data, statistics and graphics (WHO/UNICEF Human papillomavirus (HPV) vaccine coverage estimates in excel)
- BMJ. 2019;365:l1161.
- Lancet Public Health. 2016;1:e8-e17.
- Vaccine. 2020;38:1842-1848.
- Lancet. 2018;391:2103.
※ 2021/12/11 内容を更新しました。