ワクチンってたくさんあるけど、「新しいワクチン」って聞くとなんだか抵抗を感じるなぁ。 新しく開発されたワクチンだと、信頼できるのか不安になるのは当然だよね。
ワクチンへの信頼性と接種率の低下は、公衆衛生上の大きな問題となります。
これまでの調査でどのようなことがわかっているのか、整理してみましょう。
※ 専門的な表現も含まれていますので、分かりづらい表現がありましたら、以下の記事についてもご参照いたければ幸いです。
HPVワクチンは、
日本で公費補助がされている定期ワクチン
ワクチンは、過去に多くの人命を脅かしてきた感染症に対する強力な対抗手段です。
有効性や安全性、費用対効果が高いと判断されたワクチンは、多くの国が公費接種としており、経済状況に関わらず接種できるような仕組みが作られてきました。
日本における定期予防接種の一覧と接種時期はこちらから確認できます1)。
肺炎球菌やロタウイルス、BCG、麻疹・風疹の他に、HPVワクチンも2013年から定期予防接種に含まれています。
BCGとか麻疹・風疹のワクチンは、周りでもみんな当たり前のように打っていた気がするなぁ。HPVワクチンはなんで接種率が低いんだろう?
ワクチンへの信頼に重要な要素
〜重要性、安全性、有効性〜
日本は、世界の中でワクチンに対する信頼性が最も低い国であるという調査結果が報告されています2)。
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この研究では、ワクチンへの信頼に重要な要素として重要性、安全性、有効性が挙げられています。
いずれも大切な指標ですが、149カ国で実施された290件の調査から得られたデータ(約28万人の回答)を検証したところ、「ワクチンの重要性」への信頼は、「ワクチンの安全性」への信頼以上に、実際のワクチンの接種率と強い関連があると報告されています2)。
日本のHPVワクチンに関しては、その安全性(副反応)についての懸念がきっかけとなり、積極的勧奨が差し控えられたことが接種率の低下をもたらしたと考えられています。
ただ、「子宮頸がんを予防できるかどうかは、ワクチン接種後すぐにはわからない」という特徴によって、HPVワクチン接種の重要性について実感が湧きにくいという一面が影響したと考えられます。
安全性だけでなく、重要性や有効性に関する情報も合わせて発信を
HPVワクチンについては、前述の重要性、安全性、有効性の各観点につき、以下を念頭に置きつつ発信することが考えられます。
とくに、前述の内容を踏まえると、日本におけるHPVワクチン接種を普及するには、安全性だけでなくその重要性(インパクト)や有効性(予防効果)についても合わせて情報を提供することが大切と言えるかもしれません。
HPVワクチンの安全性について
世界中の数多くの研究で、HPVワクチンは「特別に重い副反応を起こしやすいわけではない」ということがわかっています3)
日本国内で実施された研究でも、同様の結論が報告されています4)。
HPVワクチンの重要性について
子宮頸がんは、日本で毎年約1万人が新たに診断され、子宮頸がん患者の9割近くで子宮の摘出など侵襲の大きな治療が必要になります5)。
また、年間に約3000人、つまり毎日8人もの人が子宮頸がんで亡くなっているのです6)。
HPVワクチンの有効性について
最新(2020年)の研究では、4価のHPVワクチンは子宮頸がんの発症リスクを約63%下げる(リスクが約1/3になる)ことがわかっています。
特に、17歳以下で接種した人ではリスクが88%も減っていました7)。
更に、単に上記を杓子定規に伝えるのではなく、接種を受ける人の不安や意思を尊重しながら、その人に合った適切な情報提供をするよう心がけることも重要でしょう。
まとめ
日本は世界の中でもワクチンへの信頼性が低い国だと言われています。
重要性、安全性、有効性に関する情報提供を工夫して、接種を受けられる方の不安や考えを尊重しながら丁寧な説明をすることが重要だと考えられます。
確かに安全性も大事だけど、「そのワクチンがどれだけ重要か」をきちんと理解することが大切なのかもしれないね。
そうだね、だから説明する側も色んな工夫をしていくことが求められているんだね。
引用文献
- 国立感染症研究所ウェブサイト.
- Lancet. 2020;396(10255):898-908.
- Cochrane Database Syst Rev. 2018;9;5:CD009069.
- Papillomavirus Res. 2018;5:96-103.
- 日本産科婦人科学会.
- 国立がん研究センター. 最新がん統計.
- N Engl J Med 2020; 383:1340-1348.
執筆者 医師:重見 大介