

HPVワクチンは女性が接種するもの、というイメージがあるかもしれません。
しかし、実は男性にも深く関係があるのです。男性もHPVワクチンを接種した方がよいとされる3つの理由を解説します。
男性にも起こる様々な病気の予防が期待できる
HPV(ヒトパピローマウイルス)について聞いたことがある方は、子宮頸がんの原因になることをご存知かもしれません。
しかし、子宮頸がん以外にも、HPVは中咽頭がんや肛門がん、陰茎がんなど、男女問わず様々ながんの原因にもなるということは、知らない人も多いのではないでしょうか。
特に男性に多い中咽頭がんは重要で、アメリカではHPVが原因となるがんのうち、男性の中咽頭がん(年間12,638人)は女性の子宮頸がん(年間11,771人)よりも多いという報告があります1)。
他にも、尖圭(せんけい)コンジローマという男女両方の性器にできるイボも、HPVが原因であることがわかっています。尖圭コンジローマはローリスクHPVによって起こる性感染症で、痛みやかゆみが症状です。こちらは4価と9価のHPVワクチンが予防に有効です。
HPVワクチンには中咽頭がんなどのHPV関連がんを防ぐという大きなメリットがあり、尖圭コンジローマの予防にもなるため、男性も接種のメリットがあるのです。
他の国では男性も打って当たり前に
こういった病気を予防するために、アメリカやイギリス、オーストラリア、カナダなどでは、女性だけでなく男性へのHPVワクチン接種も政府が推奨しています。
オーストラリアでは88%、アメリカでは64%の男性がHPVワクチンを接種しています2)。
日本では接種費用の公費負担(補助)を受けられるのはまだ女性だけですが、今後は男性への定期接種化が求められます。

男性も女性も接種することで、どちらのためにもなる
HPVは性交渉が原因の場合がほとんどで、男性から女性、女性から男性へと感染が広がっていきます。HPVワクチンを打つ人が増えると、ワクチンを打っていない女性のHPV感染も減ることが確かめられています3)。
男性がHPVワクチンを接種することは、HPV感染や将来引き起こされるがんから自分を守ることができるだけでなく、大切なパートナーを病気から守ることにもなるのです。
もし男女ともに国民の8割以上が接種できれば、HPVによって起こるがんは撲滅できるという研究報告もあります4)。
まとめ
HPVワクチンを男性も接種した方がよい3つの理由を解説しました。男性にも起こる様々ながんの予防や、尖圭コンジローマの予防、そして大切なパートナーを守るために、男性もHPVワクチンを接種することが大切です。


執筆者 医師:木下喬弘
参考文献
1)Centers for Disease Control and Prevention.
2)World Health Organization. Immunization, Vaccines and Biologicals.
3)JAMA. 2019;322:977-979.
4)Lancet Public Health. 2016;1:e8-e17.